博士の愛した数式 / 小川洋子
内容
80分しか記憶をもてない博士と家政婦の「私」とその息子、ルートのお話。
感想
小川洋子さんの小説はやっぱり好きです。
いびつなものや弱き者へ向けられるあたたかい眼差しや、目の前の与えられたことを丁寧にこなしていく品の良さ。そういった細やかさが、日々の生活ですり減った心を癒やしてくれます。
引用は「私」が誰も知らない美しさを見つけた部分です。
オイラーの公式は暗闇に光る一筋の流星だった。暗闇の洞窟に刻まれた詩の一行だった。そこに込められた美しさに打たれながら、私はメモ用紙を定期入れに仕舞った。
図書館の階段を降りる時、ふと振り返ってみたが、相変わらず数学のコーナーに人影はなく、そんなにも美しいものたちが隠れていることなど誰にも知られないままに、しんとしていた。
このとき、誰も知らない美しさを見つけ出したという「私」の、歓びや誇らしさを思うと楽しくなってきます。
数学の世界を文学的にとらえるとこんなにも美しくみえるとは新たな発見でした。
お気に入り度
★★★★