ニュートリノ小さな大発見 / 梶田隆章、朝日新聞科学医療部
内容
岐阜県・神岡鉱山の地下にある研究施設スーパーカミオカンデで観測を続けた梶田隆章さんが、2015年のノーベル物理学賞に輝いた。5万トンの超純水を張った巨大な水槽を使い、物質を構成する素粒子ニュートリノが「振動」する現象を発見、これまで重さがないとされてきたニュートリノが質量をもつことを実証したのだ。
宇宙はどうやってできたのか、物質はなぜあるのか。この世界の根源にせまる物理学者たちの探究に大きな一歩をしるした。
梶田さん自身の言葉でこれまでの研究を振り返ると共に、取材を続けてきた朝日新聞医療部の記者たちが、梶田さんの生い立ちや歩み、発見に至る物語をわかりやすく説明し、さらに今、梶田さんが危惧している日本の科学研究の現状と将来についても解説する。
引用元
感想
ニュートリノ本、二冊目です!
二冊目ともなると、少しニュートリノについて分かったような気がします。多分ね!
前回読んだ、「ニュートリノってナンダ?」が、論理的に研究内容を解説することが目的だとすれば、本書は研究の意味を伝えることの方に重点を置いているように思いました。
前回読んだニュートリノ本です!
また、本書で良かったことは、ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章さんの学生時代やインタビュー内容が記されており、梶田さんの人柄が分かったこと。
そして、カミオカンデをどのようにして作ったかを説明しており、様々な企業の努力や挑戦があって観測機ができたということが分かったこと。
この2点が分かったことで、読んだ価値はありました。
スーパーカミオカンデ建設中。企業の空洞の堀削作業が終わったところで、東大側の企画で記念コンサートが開かれたようです。地下空洞にピアノの音が響き渡ったという。粋だな~( `ー´)ノ
そして、引用部分は胸が熱くなったところです。
1998年6月5日。岐阜県高山市で世界の大御所の研究者300人が集まったニュートリノ国際会議でのことです。梶田さんがノーベル物理学賞、受賞の理由となった「ニュートリノ振動」について、発表したときのことを助手の伊藤好孝さんはこう述べています。
「スタンディングオベーションです。オペラが終わった後のアンコールのような。ああいう光景は学術の場では、後にも先にも見たことがありません。梶田さんの講演は、淡々とした調子の、梶田さんらしいすばらしい内容でした。振動を示す五つほどの証拠を次々に出して、これでもか、これでもかと、だめ押し的に並べていきました。すべてが振動を示しているんだと。その1年ぐらい前から、ニュートリノ振動は本当だと、みなが信じ始めていたと思います。だからみんな、あの講演に向けて祝福の準備をしていたのだと、私は感じました」
科学と言えば、発表した者勝ち~みたいなところがあって、競争が激しい世界なのだと思っていました。実際そういう面もあるでしょう。
だけど、科学の進歩を純粋に追い求める姿勢は、どこの国の研究者も同じで、発表の瞬間は国境も関係なくなるのだな~と思い、胸が熱くなりました。
また、梶田さんやそのチームが「ニュートリノ振動」を発見したことは偉大な業績だったのだな~と改めて思い知らされました。
ここまで書いてくれないと、彼らの成し遂げた偉業を想像できないなんて悔しい!( `ー´)ノ
それから、重力波を観測する装置「KAGRA」の命名には、ある作家さんも関係していたようです。
重力波観測を目的とした主な施設は世界に4か所ある。LIGOのほか、斜塔で有名なイタリアのピサにあるVIRGO(ヴィルゴ)、ドイツのGEO600、そして東京大学宇宙線研究所の大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」(かぐら)。神岡重力波望遠鏡(Kamioka Gravitational wave telescope)の意味だ。全国から公募された666件の候補の中から、『博士の愛した数式』などで知られる作家の小川洋子さんを委員長とする6人の命名委員会によって選ばれた。「神岡」と「重力波」の英単語の頭文字を合わせただけでなく、神に奉納される歌舞である「神楽」が、天体が「踊る」ことで発生する重力波とよく合うこと、また「神」岡でのすばらしい成果を「楽」しみに待ちたいとの思いを込めた名前だという。
小川洋子さん!!!!!
まじっすか!!!!!( ゚Д゚)
こんなところでその名前をうかがうことになるとは思ってもみなかったよ!
科学好きだとは知っていましたが…。
まじっすか……。( ゚Д゚)
さて、ニュートリノや重力波の観測が成功したことで、今後さらに宇宙の謎が明らかになっていくことでしょう。ニュートリノと重力波が発見は本当にすごいことらしいよ!
ニュートリノ振動が見つかった後、これを精密に調べる実験が世界に広がりました。その中で、ニュートリノ振動を手がかりにすれば、なぜ宇宙に物質が存在するのかという謎に迫れる可能性が出てきました。
宇宙が誕生した時、通常の物質と一緒に、その反対の電荷を持つ反物質が同数生まれたはずです。しかし、この二つが出会うとエネルギーを出して消えてしまいます。なのに、通常の物質だけは残って、私たちも現に存在しています。
この理由について、物理学者は、自然界のどこかに、物質と反物質の振る舞いに違いがあるはずだと考えています。実際、クォークという素粒子では、物質と反物質にこうした違いがありました。でも、クォークの分だけでは宇宙の物質量を説明できないだろうと結論されています。
ニュートリノは特別な素粒子で、ニュートリノとその反物質の反ニュートリノでもこの違いがあります。それが宇宙の物質の起源を説明するカギではないかと考えられるようになってきました。
重力波を観測すると何がわかるのか。ガリレオの時代からこの400年間、人類の宇宙観測は可視光や赤外線、電波、X線といった「電磁波」をとらえるものだった。重力波は、電磁波ではわからない宇宙や天体のもう一つの姿を観測することを可能にする。人類は光と並ぶまったく新しい「目」を持ったことになる。重力波を使った宇宙観測を「重力波天文学」という。
例えば超新星爆発を、光を観測する従来の望遠鏡で見るとものすごく明るく見えますが、これは、星の中心部で起きている本質的なことが表面まで伝わっていって明るくなるということです。でもニュートリノや重力波ですと(タイムラグがないので)重力崩壊のときにまさに起きている本質が見えると考えています。
宇宙の謎が解き明かされるとき、人類はどうなってしまうのか。
少し怖いですが、楽しみです!( ゚Д゚)
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