春にして君を離れ / アガサ・クリスティー
内容
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダッドからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる…。女の愛と迷いを冷たく見据え、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
裏表紙より
感想
ネタバレあります。
久しぶりに小説を読みました!
アガサ・クリスティー!
こちらはポワロさんもマープルさんも出てこない小説です。
過去の自分の行いや、夫・子供の表情や言葉を思い出して、自分は本当に愛されているのか考え直すお話です。
主人公は、相手のことを考えず自分の考えを押し付けていたため、知らないうちに大切な人がどんどん遠ざかってしまいます。
結構怖い( ゚Д゚)
主人公の思いやりのなさにはびっくりしましたが、知らないうちに人に失望されていたという構図は怖かったです。
そして極めつけは夫の態度。
妻はひとりぼっちだ。だけど、どうかそのことに気がつきませんように。(*´Д`)
何かこの夫婦、嫌だ!
主人公もよくないけど、夫も夫だ。
妻のいるところでは、物わかりのいい夫を演じているけど、本当のところでは納得がいっていないから心が離れていくのです。
仮面夫婦かよ、もっと本音をぶつけ合えよ!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
主人公にとっては、何でも言うことを聞いてくれる優しい夫なのかもしれませんが、そういうのは優しいと言わないんだよ~と思いました。
友人の方が人生を冷静に捉えているところがまたすごいところです。
「人間なんて、まあ、そんなものよね。しがみついてた方がいいのに、投げ出しちまったり、ほっとけばいいのに、引き受けたり。人生が本当と思えないくらい、美しく感じられて、うっとりしているかと思うとーーたちまち地獄の苦しみと惨めさを経験する。そんなことは長続きしたためしがないんだし。どん底に沈みこんで、もういっぺん浮かびあがって息をつくことなんて、できそうにないと思っていると、そうでもないーー人生ってそんなものじゃないの?」
「現実に存在するものから逃避することが、人生の公正なスタートといえるでしょうか」
この小説は初版が1944年です。
ということは第二次世界大戦の最中に出版されているのです。
そんな時代に「ただ従うだけは優しさではない」「現実逃避は人生のスタートにならない」といったテーマで小説を書いてしまうなんて、尋常ならぬ強い意志が感じられます。きっとたくさんの苦しみがあったのでしょうが、私には想像することもできません('_')
アガサ・クリスティーは恐ろしい作家です…!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
お気に入り度
★★★★