いかえるの感想日記

本や映画を”お気に入り度”によって評価しまとめています!他にも、お出かけしたことや音楽について感想を書いています。

億男 / 川村元気

 

億男 (文春文庫)

 

内容

 

宝くじで3億円を当てた主人公が「お金と幸せの答え」を探すお話。

 

主人公・一男は弟の借金を肩代わりしたことから、妻と離婚します。
そんなとき、宝くじで3億円を当て、戸惑った一男は、大学時代の親友で、仕事で成功し大金持ちとなった九十九に相談します。
しかし騙されてお金を全て盗られてしまうのです。
一男の知る九十九はそんな人ではなかった…。
そんな九十九を信じられない一男は、一男の知らない間の九十九を知る人物に会うことにします。
一男は消えた九十九と「お金と幸せの答え」を探すのです。

 

感想

 

ちょっと前から話題になっていたことは知っていたのですが、10月19日に映画が公開されるんですね!
知らなかったけど、先取りできてうれしい( ゚Д゚)

 

そして!!!

 

主題歌がBUMP OF CHICKENなんですってね~~!!
楽曲も一部分だけ公開されていました。
42秒からBUMP OF CHICKENの新曲「話しがしたいよ」が流れます!
やっぱり声めっちゃいい。


「億男」予告編

 

 

さて、本の感想に入ります。
ネタバレありますよ( `ー´)ノ

 

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小説の形式を借りた"指南書"みたいだな~と思いました。
読んでる感覚としては、パウロ・コエーリョの「アルケミスト」みたいです。

 

小説なんだけど、「やたらと訴えかけてくる~( 一一)」みたいな本。こういうタイプの本、私は結構好きです。
パウロ・コエーリョの「アルケミスト」は【夢を追いかけること】についてでしたが、こちらは【お金と幸せ】についてです。

 

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

 

  

幸せはお金では買えない。
とは言いますが、半分本当で半分嘘です。
お金があれば、自由は買えますが、結局使う人の心次第で幸せかどうかが決まるよ~みたいな内容でした。
"その人"の幸せはお金で買えるけど、大金は人を変えるので"その人"の幸せの基準も変わります。だから"その人"は大金を持っていても幸せになれないかもしれない。
そんな感じです( 一一)

 

心に残ったところを引用します。

 

「日本人が、海外の金持ちたちに何と言われているか知っているかい?」
「何かな?」
死ぬときが人生最大の金持ち、だ。――(後略)」

(本書より引用)

 

海外の金持ちたちの考え方は知りませんが、確かに日本人には大金を残して死んでいく人が多いように思います。遺産相続でもめるのも納得です。
日本人が死ぬときに最大の金持ちとなってしまうのはなぜでしょう?
私も日本生まれの日本育ちで、れっきとした日本人なので考えてみたのですが、ちょっと思い当たることがあります。

 

「死ぬときに最大の金持ち」となってしまうのは、「お金が欲しいお金が欲しい」と言いながら、本当にやりたいことを実現するために計画を立てていないからだと思うのです。
お金を貯めても使い方が分からない、やりたいことを何かと理由をつけて実行しない。
これが原因じゃないかな~( 一一)?

というか私がそうです!本当にやりたいこと、意外と見つからない!(^o^)/

  

滲んだ景色の先に、かつての万佐子が現れた。柔らかく美しい笑顔。大きくなったおなかを触りながら。あれはそうだ、まどかが生まれるひと月前だ。本を読んでいる一男。編み物をしながらそれを見ている万佐子。おなかの中にはまどか。家族の始まり。まどかが生まれる。万佐子は幸せそうに笑う。一男は嬉しくて泣く。ありがとう。生れてきてくれてありがとう。

 

都心からは離れているけれど、緑がたくさんある賃貸住宅に引っ越した。遊具がある公園で遊び、河川敷を散歩した。本屋に行き、一男が文庫本を買い、万佐子が雑誌、まどかは絵本を買った。一冊ずつだ。帰り道に定食屋に寄り、次の休みに遊びに行く場所を家族会議で決めた。デザートにシュークリームを買って帰る。明日の朝食べるパンも。レンタルビデオショップで旧作の映画を借りて帰った。風呂に入り、映画を観て、川の字になって眠った。

 

そこにあった幸せ。生を繋ぎ止め、明日へと生かすものたち。柔らかいバスタオル、風に揺れるカーテン、ベランダではためく洗濯物、並んだ歯ブラシ。焼きたてのパン、甘いリンゴ、淹れたての珈琲、一輪のチューリップ。
もうあの日々は戻ってこない。どんな大金でも買い戻すことはできない。

(本書より引用)

 

以上は、一男が幸せだと感じる瞬間の引用です。
今を一生懸命に過ごし、未来に希望をもって生きている様子が描かれています。

 

明日やりたいことのために、今日を一生懸命生きる。そして次の日をワクワクしながら向かえて一生懸命生きる。その繰り返しが人を幸福な気持ちにさせるのではないでしょうか。

 

 

一方、大金を手に入れた九十九はこんなことを思っていたようです。

 

「でも、旅というのは本来そういうことを楽しむためにあるはずだろう?何か些細なものを欲しがったり、それを少しでも安く手に入れるために交流をしたり。でも僕はそれがもう楽しめなくなっていることに気付いてしまった。なんでも手に入るはずなのに、お金に対して白けている。そんな自分が怖かった。だからこそ、僕は小さなお金に対しても執着しようとした」

(中略)

「でもどんなに執着しようとしても、心の底から楽しくはなかったんだ。どうでもよかった。お金があればなんでも解決してしまうということを知ってしまった僕は今、生きていくことに飽きてしまっているんだ」

(本書より引用)

 

ここでいう旅とは、一男と九十九のモロッコ旅行のことをさしていますが、人生の比喩にもなっています。
思い通りにならないから頑張る。
少しでもいい条件で手に入れられるように考える。
そういった営みが喜びや達成感、悔しさを呼び起こし人生を豊かにするのだと思います。

 

反対に、そういった精神的に刺激のない生活は、人を冷めた気持ちにさせるのかもしれません。そして大金を手にしているときほど、刺激のない生活に陥りやすいのかもしれません。
そんなことを考えさせられた小説でした。

 

お気に入り度

 

★★★★ 

人生を楽しむために、ノリって結構大切( 一一)