トーマの心臓 / 萩尾望都
内容
フランス映画『悲しみの天使』をモチーフとしてドイツのギムナジウム(高等中学)を舞台に、人間の愛という普遍的かつ宗教的なテーマを描いた作品
引用元
感想
ネタバレあります!
トーマという少年が死んでしまうところから、物語が始まりますが、
トーマの死は、遺言書を読んでみるとどうやら自殺らしいのです。
そして遺言書は、「ユーリのために死んだ」という内容でした。
ユーリのために死んだとはどういうこと???
不気味じゃない???ストーカー???( ゚Д゚)
心をざわつかせるスタートでしたが、主人公・エーリクの登場もまた嵐を呼びそうな展開でドキドキしました。
エーリクは性格こそ正反対ですが、容姿がトーマにそっくりなのです。
そのこともあってエーリクとユーリは、お互いの存在を意識しすぎてぶつかり合ったりして、常に緊張状態にありました。
だけど、エーリクと話すうちに、ユーリは気がつくのです。
トーマが何を思って死んでいったのか。
トーマがユーリにどういう思いを託して死んでいったのか。
そこに、萩尾望都が描きたかった「人間愛」をみることができるような気がします。
私は、愛とは許すこと、だと読み取りました。
どんなに罪深い人間でも、あなたを愛します。
とっても宗教的な言葉ですが、これって愛じゃない?
本当に好きじゃないと許せないですもん( `ー´)ノ
そして許す、ということは「相手を信じる」意味もこめられている気がします。
ユーリは過去の自分の行動を責めて苦しみ、自ら救いの手を断ちます。
信仰深いユーリでしたが、神様からも見放されたと絶望に陥るのです。
そんな状態のユーリをみてトーマは、彼に何が起こったのかは分からないけど、
全面的にユーリの味方になろうと考えたのではないでしょうか。
彼に何があったのかは分からない。
これから彼が何をするのかも分からない。
だけど、ずっとユーリの味方でいるよ。
トーマの死には、恐らくそんな思いが秘められているのだと思います。
これを人間愛と呼ばずになんと呼びますか!!!
人間は残念ながら欲に弱い生き物ですから、生きていればそれだけ罪を重ねてしまうことでしょう。
そして罪を感じている状態こそ、人間が一番弱くなる状態ですから(何かの漫画でそんな意味のことが書いてあって感心した覚えがある)いつまでもそんな状態が続くと病んでしまいますよね。
だから人間には許しが必要なのです!
ユーリはトーマの本当の愛に気がつき、少しずつ自分の罪に向き合うことが出来るようになりました。
これはね、愛ですよ。
男とか女とか、そんな小さい話じゃなくてね。
人間が人間を愛すること。すなわち人間愛ね!!!( `ー´)ノ
さて、記事を書いているうちに思ったのですが、もしかしてトーマが自ら死を選んだのは、ユーリを信じぬく自信がなかった、とかそんなことではないかな。
トーマはユーリの身に起こったことを知らないだろうし、疑うことだってしたと思います。それがトーマは嫌だった、とか?
ちょっとでも疑ってしまって、それがユーリに伝わってしまったら彼をとても傷つけることになる、とトーマが思っていたとしたら?
トーマは最初から最後まで死んでしまっているので、トーマの考えは推測することしか出来ません。だけど存在感はとてもあって、きっといろいろな考え方ができるでしょう。
そこがこの漫画のすごいところなのかもしれません。
以下、トーマのセリフです。
トーマは人から愛されることだけではなく、人を愛することの大切さにも気がついていたのですね( 一一)
どうしてお父さん
神様はそんな寂しいものに人間をおつくりになったの?
ひとりでは生きていけないように
ユリスモール
それでも君は――だれも愛していないの
でもそれで生きていけるの?
これからもずっと…?ひとりで…?
ほぼ、トーマとユーリのことしか書いていないけど、私はオスカーが一番好きです(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
お気に入り度
★★★★