3月のライオン(1) / 羽海野チカ
内容
主人公は、東京の下町に一人で暮らす、17歳のプロ将棋の棋士=桐山零。しかし、彼は幼い頃、事故で家族を失い、深い孤独を抱えた少年だった。そんな彼の前に現れたのは、あかり・ひなた・モモの3姉妹。彼女たちと接するうちに零は・・・。様々な人間が、何かを取り戻していく優しい物語です。
裏表紙より
感想
桐山零の心の痛みが伝わってくる1巻です。
桐山は事故で家族を失ってから、父の友人の幸田に育てられます。
幸田「……君は将棋 好きか?」
桐山「……はい」
嘘だった……。人生で初めての生きる為の――そして決して戻れない……。
これが契約の瞬間だった。将棋の神様と僕の醜い嘘でかためた
そうして幕はどうしようもなく切って落とされ――僕は将棋の家の子になった。
幸田はプロ棋士です。そして彼は将棋を愛しています。だから彼の視界に入り続けるためには強くなるしかありません。幸田の家には2人の子供がいます。みんな棋士を目指して将棋をさします。
そんな中、桐山はその子供たちを追い抜きどんどん強くなります。
やがて弟の歩が、将棋をやめ小学校の成績も下がり心がふさぎがちになります。桐山は幸田に相談します。しかしプロの道の険しさを知っている幸田は厳しかった。
幸田「プロになるのがゴールなんじゃない。なってからの方が気が遠くなる程長いんだ。進めば進む程道はけわしくまわりに人はいなくなる。自分で自分を調整・修理できる人間しかどのみち先へは進めなくなるんだよ。」
桐山は、テレビでカッコウの子育て方法を見ます。カッコウは「托卵」という方法で子育てをします。他の鳥の巣に、元々あった卵は落として自分の卵を産み、何も知らない他の鳥に自分の子供を育てさせる、という方法です。
カッコウに自分の姿を重ね合わせ、プロ棋士となった桐山は幸田家を出ることを決意します。
物語のスタートは重いです。自分を確立するために必死で将棋と向き合い生きていく桐山が主人公なので自然とそうなります。
だけどこのスタートから、紡ぎ出すストーリーが優しくて胸に温かいものがしんしんと降りつもります。泥臭く戦い、周りの温かい人間に触れて成長していく、今後の桐山が楽しみです。
お気に入り度
小説を読んだあとのような満足感です。
★★★★★