3月のライオン(2) / 羽海野チカ
内容
「勝つ理由が無い」とかいいながら負けると苦しいのは何故だ。桐山は将棋に対する中途半端さに思い悩む日々を過ごしていた。川本家との交流の中で明るいひなたの笑顔に元気づけられる。そんな彼の前に義姉・香子が現れる……。様々な人間が、何かを取り戻していく優しい物語です。
裏表紙より
感想
ひなちゃんの思い人、高橋くんが登場したり、二階堂がひなちゃんに将棋を教えたり、香子さんが登場したり、まだまだてんやわんやな1巻です(?)
2巻も名シーンの多い巻となっています!
神さまの子供(その③)
高橋くんが「高校に入りなおしたのはなんでですか?」という質問に桐山は上手く答えられなくて顔を赤くします。(桐山すぐ顔赤くなるのな、かわいい!)
「多分”逃げなかった”って記憶がほしかったんだと思います」そう答えた桐山に高橋くんは感動します。桐山も桐山で、相手に思いが通じたことに深い感動を覚えます。
桐山、その気持ち、わかるよ!
自分の中にある抽象的な概念だったり思いを言葉にするのって結構大変です。そして正確に伝えようとすればするほど不格好な言葉になるものです。だからこそそれが相手に通じたときは、とても感動します。この瞬間が、桐山が他人とコミュニケーションをとる本当の喜びを得た瞬間だったと思います。
遠雷(その③)
香子さん到来!桐山の次の対戦相手・松永さんが「C1から降格したら引退する」という気が重くなる情報をわざわざ教えに来ます!
松永さんは棋士生活を40年続けてきました。そんな松永さんに桐山は尊敬します。
桐山「松永さん…将棋好きですか…」
松永「ーー知らん 知るもんか…
勝った時は叫び出す程嬉しくて 負ければ内臓を泥靴で踏みにじられるように苦しくて世界中に”生きる価値無し”と言われたような気持にさいなまされた…なのにっ……それなのに辞められなかったこの気持ちをそんなっ言葉なんぞで言い表せるものかっっっ」
私、このシーン好きなんです。松永さんにとって将棋は、「好き」という言葉だけで言い表せないほど狂おしい感情が渦巻いているのだと感じました。それは松永さんだけではないはずです。プロになるには、こういった身を焦がすような感情と上手く折り合っていかなければならないのでしょう。
贈られたもの(その②)
またしても香子さんは嵐を連れてきます。桐山の次の対戦相手は、普段は気が弱いのに負けると酒に飲まれて暴れる男。男は、クリスマス=対局日が終われば離婚します。対局日は男にとって、大切な最後のクリスマスなのです。
しかし対峙すると男はあっけなく敗れます。ミスの一手を境に急速に集中力を手離すのです。「大切なものをこんなたやすく手離さないでくれよ」という桐山の叫びもむなしく男は感想戦もそこそこに立ち去りました。娘のプレゼントを置いて。
プレゼントが目に入った桐山は、男を追いかけプレゼントを渡します。
「あ~あ…最後のクリスマスだったのにな…」
と言ってひったくるように取る男。
桐山「みんなオレのせいかよ?!じゃどーすりゃ良かったんだよっっ
ふざけんなよ 弱いのが悪いじゃんか
弱いから負けんだよっっ 勉強しろよ してねーのわかんだよ
解ってるけどできねーとか言うんならやめろよ!!来んな!!
こっちは全部賭けてんだよ 他には何も持てねーくらい将棋ばっかりだよ
酒呑んで逃げてんじゃねーよ 弱いヤツには用はねーんだよっっっ」
戦う理由が無いとか言いながら 本当は身の内に獣が棲むのを知っている
まわりのモノを喰いちぎってでも生きていく為だけに走り出す獣
戦いが始まればどうしも 生きる道へと手がのびてしまう
誰を不幸にしても どんな世界が待っていても
桐山が将棋に全てを賭けて戦っているのは1巻でもわかっていました。私は現在24歳で、対戦相手の男ほどまだ社会に揉まれてはいないので、どちらかというと桐山の言い分に共感します。というより、男のようには生きたくないですね。
桐山の魂の叫びです。
お気に入り度
3月のライオンは思っていたよりロックです!
★★★★★