分身 / 東野圭吾
内容
函館市生まれの氏家鞠子は18歳。札幌の大学に通っている。最近、自分に瓜二つの女性がテレビに出演していたと聞いたーー。小林双葉は東京の女子大生で20歳。アマチュアバンドの歌手だが、なぜか母親からテレビ出演を禁止される。鞠子と双葉、この二人を結ぶものは何か?
現代医学の危険な領域を描くサスペンス長編。
裏表紙より
感想
ネタバレあります!
北海道と東京に住む2人の女子大生は、全く関わりのない環境で育ってきました。
ところが、周囲で起こった不可解な事件を解明しようと動き出したとき、ある重大な共通点で結ばれるのです。
共通点というのは、2人はある女性の卵子から誕生したクローンということ。
人間クローンです!
「ほほお~人間クローンですか~」とボーッと読んでいましたが、調べてみるとこれがなかなか興味深い。
人間クローンというとSFの世界だけの話かと思いましたが、理論的には実現可能らしい。そしてその技術は倫理上の問題で規制されているようです。
ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律 - Wikipedia
「クローン人間つくるのOKだよ!」となると、クローン技術で生まれた人間は自分の意志で生きられず奴隷化する恐れがあるからです。
本作でも、クローン技術によって生まれた二人の女子大生が、本人の意思とは無関係に人体研究をされそうになります。
女子大生視点で小説が進んでいき、ある程度感情移入して読んでいたため、人体研究をされそうになったときはぞっとしました。
それにしても、本作が集英社に刊行されたのが1993年。
そんなに前からクローン技術が進んでいたなんて知らなかったし、当時の最先端の科学技術をテーマに問題提起をしているところが、東野圭吾、勉強したんだろうな~と窺えてすごいと思いました。
女子大生を主人公にしているところも、なかなかチャレンジャーです。
お気に入り度
★★★
個人的には文章がもっとドラマチックだったら、さらに評価が高くなります。